茶道で使う篩

 茶道ではいろいろな道具を使いますが、決して表には出ない裏方の道具のひとつに【篩(ふるい)】があります。

まず思い浮かべるのが抹茶を漉す篩です。

美味しい薄茶を点てるため、また高価な濃茶を香り良く艶良く練り上げるため、どんなに時間がないときでも決して漉す作業を省略することはありません。

 

その篩の目数を普段は気にしたことがありませんが、私が会員になっている茶道のサークルで新規に購入することになりました。

サークルは、この秋に一席100名ほどの茶会を四席催す予定になっており、短時間に大量の抹茶を漉す必要から、効率よく漉せる篩が必要になったのです。

一般的に茶道具店で売られているもの、製菓用の粉ふるい、漉すのにあまり場所をとらないタイプといろいろ検討しました。一口に粉ふるいといっても小麦粉なのか、そば粉なのか、あるいは砂糖かもしれません。

実物を見て購入するのが一番良いのですが、ハンズにもロフトにも良いものがなくて結局ネットで探しました。

【篩】の目の細かさ粗さを表記する方法のひとつに、1インチ(2.54cm)にある目数(メッシュといいます)があります。

 

手持ちの抹茶用の篩は28メッシュ(ハズキルーペに天眼鏡も併用して数えました)でした。

ネットで販売している商品には、粉ふるいとあるだけで何メッシュという表記がありません。選ぶのは至難の業、やはり茶道具店で扱っているものが無難でしょう。

 

茶道で使うもうひとつの【篩】それは灰篩です。

灰と一口に言っても炉用と風炉用では違います。炉灰はアク抜きしたあと私は10メッシュ位の篩にかけます。一方風炉灰は28メッシュにかけて灰型を使っていました。灰型はいつも苦労しています。あるとき裏千家のオンライン茶道学で、業躰先生が美しい灰型をご披露したあとで

「皆さんもがんばって80メッシュに挑戦してみては如何」

とおっしゃったのです。

「えっ!灰を80メッシュの篩にかけるって何時間かかるの? でも乳鉢ですりつぶすくらいだからそうか」

と納得。28メッシュでふるった灰で、きれいな灰型がつくれないと嘆くのは論外でした。

 

夢の中にも篩が出てきそうです。

炭手前あれこれ

 風炉の季節になってひと月になります。

柄杓の扱い等 基本を大切にということで置水指と棚で平点前に徹しました。

棚は地板が矢筈になっていることから、5月はいつも桑小卓です。

この棚の特徴はなんといっても地板に荘る平建水そして低めの蓋置です。

昨季まで使っていた平建水は直径が大きめだったため、水屋にさげるときに皆さんが扱いにくそうでした。

何か適当なものはないかと探していたところ、風炉の灰器がぴったりでした。

 蓋置は七種蓋置のサザエ、カニ、五徳などを使ってみました。

切り合わせ風呂釜だったので五徳もつかえましたが、これが一番しっくりきました。

 

 というわけで5月は炭手前をしませんでした。

炭手前といえば、「淡交5月号」に岡本浩一氏が「炭手前の前提再考」というタイトルで興味深い記事を載せておられました。

 

 若い人の中には炭を見たこともない人もいます。

キャンプファイアーや暖炉なども含めて火を扱った経験の乏しい人達が茶人の中心世代になってきました。

「火の経験のない世代に、灰造りを教え、灰形を教え、炭の扱いを教える方法論を再構築するべき時期にきていると思う」と書いておられます。

 

 私は薪でお風呂を沸かした経験のある世代ですが、炭の扱いはまだまだです。

炭を使った茶事では、炭手前を始める時に種火がちょうど良い状態にしておくのに苦心します。

特に風炉は懐石が済んでから炭手前なので、太めの丸毬打を選んで種火にするとか。

 

 SDGsの目標 7 〝 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する〟の観点からも悩ましいところです。

夏場は炭で湯を沸かしながら一方でエアコンに頼っている始末です。

先月は、6月になったら炭手前の稽古をしようと思っていましたが、夏日が続くとトーンダウンしてしまいます。

 

 でも電熱器に乗せられた釜は変化がないので見ていてつまりません。

冬場の寒い季節には、炭火の赤と釜から立ち上る大量の湯気がなんといってもご馳走です。少し火が落ち着いてくると湯気もおとなしくなり、その変化がなんとも素晴らしいのです。

姫百合が咲きました。アップに撮りすぎましたが、姫です。

 

コロナ禍での茶事

二月初旬の日曜日、稽古の一環として正午茶事を行ないました。
極寒の季節といえば大炉です。

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我が家に大炉は切っていないので、貸茶席を利用させてもらいました。
その茶席は、駅からほど近いビルの最上階にありました。
書物から得た「市中の山居」という言葉に実感を持てないでおりましたが、
まさにこの茶席のことと納得しました。
露地がことに素晴らしく、春の光が満ち溢れ、一輪の白い椿がちょうど躙り口を向いて咲いており、傍の塀に少し大きめの鳥が私達を出迎えるように止まっていたので感激もひとしおでした。

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腰掛待合

寒さ対策とともに大事なことが感染対策です。
まずは手洗い、検温からスタートです。
蹲居は柄杓を使い廻しするので諦めて、湯桶石にアルコールを置き手指の消毒をして席入りしました。

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内露地

懐石は取り回しを一切避け、お膳に初めから木杯をセット、あとは銘々皿を多用しました。
向付の皿を下げて、焼き物皿、次にそれを下げて海の物・山の物・香の物の皿というふうに。
燗鍋は亭主が少量をついで廻り持ち帰ります。
湯漬けをいただくために必要な湯斗は、客に飯椀・汁椀の蓋をとってもらい、亭主が注いであげます。
皆さん黙食して、歓談するときはマスクをしてから。

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白梅、乙女椿



濃茶、薄茶とも勿論各服点です。
主菓子は懐紙にのせて、干菓子は個包装のままということで、安全策をとりました。

亭主は、慣れない逆勝手の点前に加え、懐石もいつもとはちょっと違った提供の仕方でご苦労なさったことと思います。

フジバカマ

 

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フジバカマの蕾


 秋の彼岸 日中は30℃になる日もありますが、開け放った窓からは清冷な風が入ってきて気持ちが良いこのごろです。

 

 秋の七草のひとつ“フジバカマ”を鉢で育てていますが、春先に植え替えをした効果で下葉が茶色にならず、手をかけたことに応えてくれたフジバカマを愛しく思います。

 今朝の朝日新聞朝刊の『ひととき』欄に、アサギマダラというチョウに恋する82歳読者の一文が載っていました。
 アサギマダラに会いたくて、まずその成虫が好むという“フジバカマ”を育てたといいます。“フジバカマ”は近年減ってきているので、株を見つけるまでに数年。それから5年経ち、やっと20株ほどに増え蕾がつき始めたので、
「恋しいアサギマダラに今年こそ会えるかも」

と期待しつつ丁寧に水をやっているという内容でした。

 

 この方のように目的を達成するために長い年月努力を惜しまず、むしろそんな生活を楽しみに日々を過ごす生き方素敵だなあと思います。