炭手前あれこれ
風炉の季節になってひと月になります。
柄杓の扱い等 基本を大切にということで置水指と棚で平点前に徹しました。
棚は地板が矢筈になっていることから、5月はいつも桑小卓です。
この棚の特徴はなんといっても地板に荘る平建水そして低めの蓋置です。
昨季まで使っていた平建水は直径が大きめだったため、水屋にさげるときに皆さんが扱いにくそうでした。
何か適当なものはないかと探していたところ、風炉の灰器がぴったりでした。
蓋置は七種蓋置のサザエ、カニ、五徳などを使ってみました。
切り合わせ風呂釜だったので五徳もつかえましたが、これが一番しっくりきました。
というわけで5月は炭手前をしませんでした。
炭手前といえば、「淡交5月号」に岡本浩一氏が「炭手前の前提再考」というタイトルで興味深い記事を載せておられました。
若い人の中には炭を見たこともない人もいます。
キャンプファイアーや暖炉なども含めて火を扱った経験の乏しい人達が茶人の中心世代になってきました。
「火の経験のない世代に、灰造りを教え、灰形を教え、炭の扱いを教える方法論を再構築するべき時期にきていると思う」と書いておられます。
私は薪でお風呂を沸かした経験のある世代ですが、炭の扱いはまだまだです。
炭を使った茶事では、炭手前を始める時に種火がちょうど良い状態にしておくのに苦心します。
特に風炉は懐石が済んでから炭手前なので、太めの丸毬打を選んで種火にするとか。
SDGsの目標 7 〝 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する〟の観点からも悩ましいところです。
夏場は炭で湯を沸かしながら一方でエアコンに頼っている始末です。
先月は、6月になったら炭手前の稽古をしようと思っていましたが、夏日が続くとトーンダウンしてしまいます。
でも電熱器に乗せられた釜は変化がないので見ていてつまりません。
冬場の寒い季節には、炭火の赤と釜から立ち上る大量の湯気がなんといってもご馳走です。少し火が落ち着いてくると湯気もおとなしくなり、その変化がなんとも素晴らしいのです。