2017年4月8日 井伊直弼

稽古場の床は悩ましいところです。
花は季節の花ということで、茶花は一通り育てていますので悩むことはほとんどありません。
問題は掛物です。
数少ない持物から、大体は季節に相応しいと思われる色紙や短冊、上の方のお点前を稽古する時は「直心是道場」などを掛けています。


今日の稽古場の床には迷うことなく大亀老師筆「一期一会」を掛けました。
先月末に彦根城に行ってきたからです。
井伊直弼が17歳の時から藩主になる36歳まで暮らした埋木舎(うもれぎのや)も見てきました。


直弼の著書茶の湯一会集」は晩年になって書かれたもので、序文に「一期一会」の記述があります。


『本日の出会いは、再び同じ出会いはないと考え、主人は全てのことに気を配り、客も亭主の趣向を何一つおろそかにせず、心に留めて、双方が誠意をもって交わるべきである』ということです。


また末尾近くには「独座観念」の記述があります。


『客が帰ったら、主は炉の前に独座 今日一期一会済み、ふたたびかへらざることを観念し、或いは独服をもいたすこと 是一会極意の習なり』とあります。


日本の開国近代化を断行し、反対勢力を粛清したため、反動を受けて暗殺されてしまった井伊直弼は偉大な茶人でもありました。