2013年3月13日(水) 静嘉堂文庫美術館

宗叔さん、宗芳さんと連れ立って茶道具名品展を観賞してきました。
目当ての第一は世界に3点しかないという曜変天目茶碗。
これは国宝であり、茶道具の分類では大名物です。
別名稲葉天目。
稲葉とは、淀藩主稲葉家のことであり、稲葉家が所有していたことからこの名がつきました。
この稲葉家とは、かの有名な春日局の嫁ぎ先です。
春日局は稲葉家を離れて徳川家光の乳母になったのです。
家光はこの茶碗を春日局に下賜したので、稲葉家の所有となったわけです。
家光がこの茶碗の価値を分かっていて下賜したのだとすれば、そのことから家光の春日局に対する想いが分かると言うものです。

国宝 曜変天目(稲葉天目) 宋時代 12〜13世紀
静嘉堂文庫美術館のサイトより

もうひとつ驚いたことといえば、曜変天目茶碗世界に3点しかないと前行に書きましたが、他の2点も日本国内にあるのです。
一つは大阪の藤田美術館、残る一つは大徳寺龍光院
つまりこの茶碗が焼かれた中国にはないということです。

これに関して昨年ビッグニュースが発表され、南宋の宮廷跡で曜変天目茶碗の陶片が3年前に見つかったということです。
こんな希少価値のある曜変天目茶碗を間近で見られ、幸せでした。


この茶碗には「尼崎台」という天目台が付いています。
この「尼崎台」の高台の裏側には朱漆の“むかで印”というものがあるのは有名ですが、残念ながら展示では見ることができませんでした。


目当ての第二は唐物茄子茶入です。
2点あって一つは付藻茄子、もう一つが松本茄子で、いずれも大名物です。
2点とも大坂夏の陣で焼失した大坂城の焼け跡から探し出されましたが、どちらもバラバラでした。
家康の命で塗師の藤重藤元(ふじしげとうげん)藤重藤巌(ふじしげとうがん)父子の繕いによって蘇ったということです。
塗師ですから、その手法は漆です。
褐色の釉景はすべて塗りで表されているそうですが、素人には全く判別がつかず、透過X線写真を見て納得せざるを得ません。

左:大名物 唐物茄子茶入 松本茄子(紹鴎茄子) 南宋〜元時代 13〜14世紀
右:大名物 唐物茄子茶入 付藻茄子(松永茄子) 南宋〜元時代 13〜14世紀

静嘉堂文庫美術館のサイトより



お稽古で「唐物」とか「大名物」とか「中興名物」という言葉をほとんど無意識に使っていますが、今日の展示物を鑑賞したからには、軽々に言うことは憚られます。
写しを使うにせよ、つもり使いをするにせよ、その点前にある歴史的背景を考えながら道具を扱うことが大切だと感じました。