大寄せの茶会

大寄せの茶会に参加する機会が年に何度かはあるものです。
その中で“心に残る茶席”とはどんなものでしょうか。
今の私にとってそれは“席主と正客の会話”です。
とはいえ、正客を譲り合ってなかなか決まらない場合も多いです。
そんな時は、席主と正客の会話とはいきませんが、席主が『頼まれ正客』を上手にリードしていくことも席主の力量でしょう。


茶会の準備には何ヶ月もあるいは年単位の時間が必要かもしれません。
ご自分の持っているある道具に焦点をあて、それを趣向にする方もいらっしゃることでしょう。
季節の行事に焦点を当てるかもしれません。
席主の人生の節目に席主を務められているかもしれません。


客となって席入りし、最初に床を拝見したいところですが、大寄せの場合それができないことが多いのが残念です。
やっと正客を引きうけて下さる方が決まると、正客から
「お高い席を頂戴し身が引き締まる想いです。至らないことがあると存じますが皆様どうぞよろしくお願い致します」
とご挨拶をいただき、次客以下末客まで、お正客に
「どうぞよろしくお願い致します」
と、これから始まる一会に期待して一礼致します。


その頃には席主がお出ましになり、
「本日はようこそお出で下さいました」
とご挨拶して下さいます。
直にお菓子が持ち出されお点前がスタートします。


お正客にはまずお床についてお尋ねしてほしいです。
席主は掛物を読上げ、お花や場合によって香合やその他の飾りものについて説明してくださいます。
それによって客は、今日の茶席の趣向をおおよそ理解できるものです。


席主は正客と会話することは当然のことではありますが、そのやり取りの中にも連客への心遣いがあるととても嬉しいものです。
客が大勢ですと菓子を取り回すのにも時間がかかり、まだ菓子器が回ってこない客もたくさんいる中で、お正客が一口召し上がったからと
「いかがでございますか。今日の菓子は○○で△△製でございます。」
と言われても
「もう少し待って」
という気持ちになることもあります。


こんなこともあります。
正客がたまたま席主と親しい方だったりすると、
「先日の○○ではどうこうで□□でしたね」
のような会話になってしまい、連客一同は
「何の話?」
となってしまいます。


それからお道具ですが、茶会はめずらしいお道具に出会える良い機会です。
でも、あれもこれも箱書があり立派で高価なものを並べていただいても何か虚しさを感じてしまいます。
村田珠光の言葉に「藁屋に名馬をつなぎたるがよし」という言葉がありますが、何か一点光る物があれば十分ではないでしょうか。
加えて、その光る道具に対する席主の想い、例えばその道具との出会い、あるいは代々受け継いできたものならなおさらのこと歴史などお話しして下さったら嬉しいです。