恩師を偲んで

2013年1月31日私達の恩師が亡くなりました。
恩師は巳年のお生まれで、来月84歳を迎えられるはずでした。
圧迫骨折のリハビリに励んでおられるとばかり思っておりましたので、突然の訃報に大変驚き、通夜告別式を終えた今になっても、これは現実ではなく夢なのではと思うばかりです。


私が恩師の門をたたいたのは今から30年前、夫の転勤で横浜に越してきた翌月のことでした。
恩師はそのころ50代の半ばで、とてもお美しく優雅で、優しく私に話かけてくださいました。
私が故郷で、茶道を少し習っていたこと、この横浜でも茶道を続けたいことをお話すると、据えてあった秋泉棚で薄茶点前をしてごらんなさいとのこと。
私は緊張しながら、つたないお点前を披露しました。
そして入門をお許しいただいたのです。
その場にいらっしゃったお弟子さんが、私に
「あなたはとても良い社中に入られましたよ」
と耳打ちしてくださいました。


あれから30年の月日が流れたのですね。
私は夢中で新しいお点前を覚え、ご注意を受けたところは家で復習し、二度と同じご注意を受けないように心がけました。
余程のことがない限りお稽古は欠席しませんでした。
努力してそうしたのではなく、お稽古が楽しみで仕方がなかったのです。


30年の間には道草をしたこともありますし、回り道をしたこともあり、正直茶道はただ続けているだけという時期もありました。
でも、何かが一段落すると必ず茶の道に戻ってまた歩き始めている自分がいました。
そんな私を、恩師はいつも温かく見守り続けて下さいました。
茶道は私の心の糧であり、恩師は心の拠り所でした。
本当にありがとうございました。